総院長ブログ

2024/11/22

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第4回統括院長ブログ「下まぶたの経結膜的脱脂は本当に必要ですか?」

下まぶたの経結膜的脱脂は本当に必要ですか?

最近、テレビで美容外科の「下まぶたの脂肪取り」のCMがしつこい程目に付く。
下まぶたの眼窩隔膜後部に存在する眼窩脂肪を経結膜的に切除する手術である。「経結膜的」と
は下まぶたを反転して(あっかんべーの状態)、瞼結膜を切開して眼窩脂肪にアプローチすると
いうこと。
年齢とともに眼窩隔膜や眼窩内部の眼球を支える靭帯等の脆弱化により、眼窩脂肪が前方に進出
すると、下まぶたが膨らんでいわゆる「バギーアイ(baggy eye)」の状態になり、膨らんだ部分の
下方に影ができるので疲れたような顔貌になるのである。
この状態で加齢による下瞼皮膚弛緩(下まぶたの皮膚のたるみ)が進行していなければ、「経結膜的」
な下まぶたの脂肪取りは実際良い適応である。
しかし、最近はこの「下まぶたの脂肪取り」が様々な美容外科であまりにも「商業的且つ安易に」
行われている感が拭いきれない。テレビで「下まぶたの脂肪取り」のCMが溢れるようになった頃
からであろうか、「他院で下まぶたの脂肪取り処置後の下まぶたのくぼみ過ぎについての相談」
が増え始めたのは。来院される方の多くは20~30歳代の女性。下まぶたがくぼんで目の下に逆三
角形の黒い影ができているのである。仰向けに寝てもらって、下まぶたに水を垂らせば立派な水
溜まりができるくらいへこんでいるのである。

「脂肪取る前よりクマの面積が広がって、不健康そうに見える」という理由で来院される方がほ
とんどである。
20~30歳代であれば本来、眼窩脂肪の切除が適応になる症例などほとんど存在しないはずであ
る。このくらいの年齢層での「目の下のクマ」というのは眼窩脂肪が前方にヘルニアを起こして
るわけではなく、「tear trough(ティア トラフ)」タイプのクマなのである。「tear trough(ティ
ア トラフ)」とは、文字のごとく涙が流れ落ちる通り道に存在する浅い溝のことである。下まぶた
の「tear trough」領域の皮膚がその上部の眼窩脂肪領域より相対的に後退してることによって、
影ができているので、こういうケースの場合は脂肪取りではなく、へこんでいるtear trough領域
のボリュームを補うことによって眼窩脂肪領域との高低差を少なくすることによって影のでき方
を緩和する方法が治療の基本になる。40歳くらいまでの比較的若年層で、眼窩脂肪を切除しない
といけないほどヘルニアを起こしている症例なんて僕はほとんど見たことがない。「tear
trough」タイプのクマで本来眼窩脂肪を取る必要のないのに、取ればへこむのは自明の理である
だろうに…。さらに最悪なのは、この脂肪取りと同時に脂肪注入移植をされているケース。tear
trough 領域はパンパンなボリュームになっているのに、眼窩脂肪領域が思いっきり窪んでいるの
で、tear trough領域との境界で絶壁の如くいきなり落ちこんでたりする。相談に来られた方には
申し訳ないが、本当に「残念過ぎる」仕上がりである。わざわざオプションの費用まで出して不
要な「脂肪注入移植」なんて受けなければ、もう少しはマシな仕上がりになってただろうに。た
だ、こういう処置をするクリニックは、売り上げを上げるために、「目の下のクマ」で来院した
人には、脱脂の適応不適応なんて考えずに猫も杓子も「経結膜的脂肪取り」と「脂肪注入移植」
を勧めて来るので本当にたちが悪い。

じゃあ、どういう処置を受けるのがベストだったのか。正解はもちろん既に上述したように単に
tear trough領域のボリュームを増すことであるが、問題はその方法論である。ヒアルロン酸注
入、移植脂肪注入、FGFによる自己組織回復…等いろいろあるが、もちろん僕はルネッサンス美
容外科医院のお家芸でもある「FGFによる自己組織回復」を推奨する。まあ、方法論についての
詳細はまた後日の機会にでも解説しよう。
さてここからが今回のブログの本題。
「経結膜的脂肪取り」でくぼんでしまった下まぶたの治療はどうすれば良いのか。当院ではこの
ケースでも上まぶたのくぼみの治療と同様、「FGF2」を使用して良好な結果を出している。処置
方法は、眼窩領域用に濃度を調整したFGF2を経皮的に隔膜後部の眼窩脂肪に投与するだけであ
る。投与後はFGF2水溶液の水分で膨らんで、見た目は一時的に理想的な状態になっている。ただ
水分は2~3時間程度で吸収されるので一旦は元の状態に戻る。FGF2は極めて不安定な生体内タ
ンパクであり生体組織内での半減期は数十分なので、水分が吸収された頃には分解・失活されて
いる。つまり、FGF2が組織に作用するのはわずかに数時間にも満たないが、眼窩脂肪領域の組織
修復機転を発動するには十分な時間なのである。投与後の評価は2ヶ月後にしている。2ヶ月後が
このFGF2投与による組織修復、そして組織修復過程における周辺組織への影響の終了と判断して
いるからである。当院でのFGF2投与プロトコールに従えば、一度の投与で平均的に欠損脂肪組織
容積の40~50%回復している。2ヶ月後に必ず評価のために来院して頂いて、希望があれば2度目
のFGF2投与を行っている。2度目も2ヶ月後に評価を行っている。2度目の投与では残存欠損組織
容積の40~50%回復するので、2回の投与で当初の欠損組織量の約60~75%程度が回復すること
になる。
FGF2投与による治療の利点を以下に列挙する。
① FGF2は、もともと生体内に存在するタンパク質であり、投与することで生体内で炎症を起こ
したりすることもないので処置後の腫れ等によるダウンタイムがない。
② FGF2による容積回復は「自己組織」なので、ヒアルロン酸等のフィラーのように将来的にア
レルギーや感染を起こす心配はない。
③ FGF2投与による治療は組織回復容積を予測しやすい。
④ FGF2投与によって回復した組織は、ヒアルロン酸等のように吸収分解して容積が短期間で減
少することはないので、極めて長期間に渡り良好な状態を維持できる。
下まぶたの経結膜的脂肪取りでくぼみ過ぎて困っている方、そして、これから下まぶたのクマの
治療で脂肪取りを検討されている方、ぜひルネッサンス美容外科医院でカウンセリングをお受け
ください。

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